RESPIRATORY MEDICINE COLUMN

サルタノールとメプチンの違いとは?
発作時吸入薬の正しい考え方

当院では原則として15歳以上の方を対象に、喘息・咳喘息・長引く咳の診療を行っています。
診療の中で、「サルタノールとメプチンは何が違うのですか?」「どちらが強いのですか?」と質問されることがあります。

サルタノールもメプチンエアーも、急な息苦しさや喘鳴を和らげる発作時吸入薬です。
ただし、これらは喘息を根本から安定させる薬ではありません。では、何が違うのか?
ぶっちゃけると、「きのこ◯山」と「たけのこ◯里」の違いくらいでしかありません。

どちらも発作時吸入薬

サルタノールもメプチンエアーも、気管支をすばやく広げる短時間作用型β2刺激薬です。

成分は異なります

サルタノールはサルブタモール、メプチンはプロカテロールという成分です。

使いすぎは危険サイン

発作時吸入薬が増える場合、喘息コントロール不良や増悪リスク上昇のサインです。

発作時吸入薬は「火事の時の消火器」のような薬です。
ただし、喘息治療で最も大切なのは、火事を起こしにくくすること、
つまり吸入ステロイドを含む治療で気道炎症を抑えることです。

サルブタモール(サルタノール)とメプチンの違い

サルタノールとメプチンエアーは、どちらも気管支をすばやく広げる薬です。
急な息苦しさ、喘鳴、発作時の症状緩和に使います。

役割は似ていますが、成分は異なります。
サルタノールはサルブタモール、メプチンはプロカテロールです。

「どちらが強いか」だけで選ぶ薬ではありません

患者さんからは「どちらが強いですか」と聞かれることがあります。
それは正直、「きのこ◯山」と「たけのこ◯里」どちらが美味しいですか?の質問と同じで、回答に困ってしまいます。
実際には、薬の強さだけでなく、発作時吸入薬をどのくらい使っているかが重要です。

使用回数が増えている場合は、薬が足りないというより、
喘息そのものが不安定になっている可能性があります。

サルタノールとメプチンの比較表

製品画像は著作権や広告表現の問題があるため、ここでは薬剤名・一般名・分類・注意点を表で整理します。
色や見た目だけで薬の種類を判断するのは危険です。

項目 サルタノール メプチンエアー
一般名 サルブタモール プロカテロール
分類 短時間作用型β2刺激薬(SABA) 短時間作用型β2刺激薬(SABA)
主な役割 急な息苦しさ・喘鳴を和らげる 急な息苦しさ・喘鳴を和らげる
効果発現 比較的速い 比較的速い
持続時間 数時間程度 数時間程度
注意点 動悸、手のふるえ、頻脈など 動悸、手のふるえ、頻脈など
重要な考え方 使う回数が増える場合は治療見直し 使う回数が増える場合は治療見直し

実際にどちらを使うかは、年齢、症状、吸入手技、副作用の出方など踏まえて判断します。
しかし繰り返しますがやっぱり「きのこ◯山」と「たけのこ◯里」どっちが好き?程度の違いです。

SABAとは何でしょうか?

SABAは short-acting beta2 agonist の略で、
日本語では短時間作用型β2刺激薬と呼ばれます。

気管支の筋肉をゆるめ、狭くなった気道をすばやく広げる薬です。
発作時の苦しさを和らげるうえで重要な薬です。

即効性があります

発作時の息苦しさや喘鳴を和らげるために使います。

炎症は抑えません

気管支を広げる薬であり、喘息の本態である気道炎症を抑える薬ではありません。

使いすぎに注意

使用回数が増える場合は、喘息コントロール不良のサインです。

SABAは「消火器」、吸入ステロイドは「防火」です

サルタノールやメプチンエアーは、火事が起きた時の消火器のように、
その場の苦しさを和らげる薬です。

一方で、喘息を安定させるには、火事を起こしにくくする治療、
つまり吸入ステロイドを含む治療で気道炎症を抑えることが大切です。

SABAの使いすぎは危険なサインです

以前は、軽い喘息であれば「苦しい時だけSABAを吸う」という治療が行われていました。
しかし現在の国際的な喘息管理指針であるGINAでは、
成人・思春期喘息に対してSABA単独治療は推奨されていません。

週2回以上使う場合は、治療見直しを考えます

発作時吸入薬を週に2回以上使う場合や、夜間・早朝の咳で目が覚める場合は、
喘息コントロールが不十分な可能性があります。

「吸えば楽になるから大丈夫」ではなく、
発作が起きにくい状態を作ることが大切です。

SABINA研究

SABINA研究では、SABA過使用が喘息増悪や死亡リスク上昇と関連することが報告されました。
SABAを多く使う状態は、喘息が不安定であるサインです。

GINAの考え方

GINAでは、喘息患者に対して吸入ステロイドを含む治療が重視されています。
喘息は単なる気管支収縮ではなく、気道炎症を伴う病気だからです。

発作時吸入薬を年間3本以上使う場合は注意が必要です

サルタノールやメプチンエアーなどの発作時吸入薬は、
日本では1本100吸入製剤が一般的です。

年間3本以上、つまり年間300回程度以上使っている場合は、
SABA過使用として注意が必要です。
これは「薬が悪い」という意味ではなく、
それだけ発作時吸入が必要な状態が危険なサインだという意味です。

咳に対するメプチン錠・ホクナリンテープについて

咳が続く時に、メプチン錠などの内服β2刺激薬や、
ホクナリンテープなどの貼付β2刺激薬が処方されていることがあります。

これらの薬は気管支を広げる作用がありますが、
吸入薬と比べて全身に作用しやすく、
動悸、手のふるえ、脈が速くなる感じ、不眠などの副作用が出ることがあります。

「咳止め」として安易に使う薬ではありません

咳の原因は、喘息、咳喘息、感染後咳嗽、副鼻腔炎、逆流性食道炎などさまざまです。
気管支拡張薬で一時的に楽になることがあっても、咳の原因が治療されているとは限りません。

特に、動悸や手のふるえが出る場合には、薬の影響を考える必要があります。

ICS/LABA吸入薬との重複にも注意が必要です

喘息治療でICS/LABA吸入薬を使用している方に、
さらにホクナリンテープなどのβ2刺激薬を重ねると、
β2刺激薬の作用が重複し、動悸、頻脈、手のふるえなどが出やすくなることがあります。

状況によって医師が意図して使用する場合もありますが、
咳があるからといって漫然と重ねる薬ではありません。

よくある副作用

  • 動悸
  • 脈が速くなる感じ
  • 手のふるえ
  • 不眠
  • 胸が落ち着かない感じ

確認したいこと

  • 内服薬・貼付薬・吸入薬が重複していないか
  • 咳の原因が喘息・咳喘息なのか
  • 夜間や明け方に症状があるか
  • FeNOや呼吸機能検査で気道炎症を評価しているか

吸入薬は「薬の種類」だけでなく「吸い方」も重要です

サルタノールやメプチンエアーのような吸入薬は、
薬を噴霧するタイミングと吸い込むタイミングを合わせる必要があります。

このタイミングが合わないと、薬が十分に気管支へ届かず、
「吸っているのに効きにくい」と感じることがあります。

同調が難しいことがあります

発作時、高齢の方、吸入に慣れていない方では、
噴霧と吸気のタイミングが合いにくいことがあります。

スペーサーを使う場合があります

吸入補助器具を使うことで、薬を吸いやすくなる場合があります。
必要に応じて吸入手技を確認します。

「薬が効かない」の前に、吸入手技を確認します

吸入薬は、薬剤選択だけでなく、正しく吸えているかがとても重要です。
当院では必要に応じて吸入手技を確認し、患者さんに合う薬剤・デバイスを検討します。

MART療法(従来SMART療法と呼ばれていた治療)

現在の喘息治療では、
吸入ステロイド(ICS)を含む治療によって気道炎症を抑えることが重要です。

その一つに、吸入ステロイド(ICS)とホルモテロールを含む吸入薬を、
毎日の維持治療と発作時吸入の両方に用いる
MART(Maintenance And Reliever Therapy)という考え方があります。

SMART療法という名称について

以前はSMART療法(Symbicort Maintenance And Reliever Therapy)という名称が広く使われていました。
これはシムビコートの商品名に由来する表現です。

現在は、薬剤一般として表現するため、
MARTという名称が使われることが増えています。

従来型

発作時にはSABAを使い、
維持治療は別の吸入薬で行う方法です。

MART療法

ICS/ホルモテロール配合薬を、
維持治療と発作時の両方で用いる方法です。
発作時にもICSが入る点が特徴です。

SYGMA・Novel START・PRACTICAL試験

軽症喘息において、
ブデソニド/ホルモテロール頓用は、
SABA頓用と比べて重い喘息増悪を減らすことが示されています。

これらの研究結果は、
発作時に気管支を広げるだけでなく、気道炎症にも介入するという
現在の喘息治療の考え方を支えています。

ただし、すべての方にMART療法が適しているわけではありません。
吸入手技、重症度、年齢、薬剤の適応、これまでの治療歴を踏まえて判断します。

よくある質問

Q.サルタノールとメプチンはどちらが強いですか?

どちらも発作時に気管支を広げるSABAです。成分は異なりますが、役割は似ています。
「きのこ◯山」と「たけのこ◯里」程度の違いです。

実際には、どちらが強いかよりも、
発作時吸入をどのくらい使っているか、
喘息コントロールが十分かを確認することが重要です。

Q.発作時吸入薬だけで治療してはいけませんか?

現在の喘息治療では、SABA単独に頼る治療は推奨されていません。

喘息では、気道炎症を抑える治療が重要です。
発作時吸入の使用回数が増える場合には、治療の見直しが必要です。

Q.毎日吸っても大丈夫ですか?

発作時吸入が毎日必要になる場合は、喘息コントロール不良の可能性があります。

自己判断で使い続けるのではなく、吸入ステロイドを含む治療の調整が必要か確認します。

Q.メプチン錠やホクナリンテープで動悸が出ることはありますか?

あります。内服薬や貼付薬のβ2刺激薬は、
吸入薬と比べて全身に作用しやすく、
動悸、脈が速くなる感じ、手のふるえ、不眠などが出ることがあります。

吸入薬、内服薬、貼付薬が重複している場合には、
β2刺激薬の作用が重なって副作用が出やすくなることがあります。

Q.SMART療法とMART療法は違いますか?

基本的には近い概念です。
SMART療法は、もともとシムビコートの商品名に由来する表現です。

現在は、薬剤一般として表現するため、
MART(Maintenance And Reliever Therapy)という名称が使われることが増えています。

院長より

サルタノールやメプチンエアーは、発作時に気管支を広げる大切な薬です。
苦しい時に素早く症状を和らげる意味では、非常に重要な役割があります。

一方で、吸えば楽になるために、発作時吸入薬だけで様子を見てしまう方もいます。
しかし、喘息は気道炎症を伴う病気であり、発作時吸入薬だけでは根本的な管理にはなりません。

また、咳に対してメプチン錠やホクナリンテープなどが処方され、
動悸や手のふるえを訴える方も少なくありません。
特に、ICS/LABA吸入薬など他のβ2刺激薬と重なっている場合には注意が必要です。

当院では、呼吸機能検査、FeNO、胸部X線なども用いながら、
現在の喘息コントロール状態を評価し、必要に応じて治療を調整しています。

RESPIRATORY MEDICINE

発作時吸入薬が手放せない方へ

サルタノールやメプチンエアーを使う回数が増えている方、
夜間や早朝に咳で目が覚める方は、喘息の治療を見直す時期かもしれません。

福岡市早良区高取、藤崎駅・西新駅周辺で、
呼吸器専門医による喘息・長引く咳の診療を行っています。