COLUMN / PET ALLERGY & RESPIRATORY SYMPTOMS
犬・猫アレルギーと咳・喘息について
「動物に触ると鼻水が出る」「猫カフェで咳が止まらなくなった」
「犬を飼い始めてから喘息が悪化した」といった相談は、呼吸器内科でも少なくありません。
犬や猫は、多くの方にとって大切な家族です。
一方で、アレルギー体質や喘息がある方では、動物由来のアレルゲンが咳や喘息症状に関与することがあります。
直接触れていなくても、犬や猫のアレルゲンは衣類や布製品に付着して運ばれ、
家庭以外の環境でも症状のきっかけになることがあります。
また、猫アレルギーと豚肉アレルギーが関係する「pork-cat syndrome」や、
マダニ咬傷後に牛肉・豚肉などで症状が出る「α-gal症候群」など、
動物由来アレルゲンには少し複雑な話題もあります。
福岡市早良区高取、藤崎駅・西新駅周辺から通いやすい呼吸器内科です。
毛だけが原因ではありません
アレルゲンは毛そのものではなく、皮膚、唾液、フケ、分泌物などにも含まれます。
触れなくても症状が出ることがあります
アレルゲンは衣類や布製品に付着して運ばれ、室内や公共空間に広がることがあります。
咳・喘息に関係することがあります
咳喘息や喘息の悪化因子として、動物アレルゲンが関与することがあります。
本コラムは一般的な医学情報です。実際の診断や治療は、症状、診察所見、呼吸機能検査、FeNO、アレルギー検査などを踏まえて個別に判断します。
犬・猫アレルギーの原因は「毛」だけではありません
「犬や猫の毛がアレルギーを起こす」と思われがちですが、
実際には、皮膚、唾液、フケ、分泌物などに含まれるタンパク質が原因になります。
こうしたタンパク質をアレルゲンと呼びます。
猫では Fel d 1、犬では Can f 1 などが代表的です。
猫アレルゲン(Fel d 1)
猫アレルギーで最も重要なアレルゲンです。
皮脂腺や唾液などに由来し、非常に小さな粒子として空気中に広がりやすい特徴があります。
犬アレルゲン(Can f 1 など)
犬にも複数のアレルゲンがあります。
犬種によって差はありますが、「完全にアレルギーが出ない犬種」は基本的に存在しません。
同じ犬でも、個体によって反応が違うことがあります
犬アレルゲンの量は、犬種だけでなく、個体差、性別、皮膚の状態、唾液やフケの量などによって変わることがあります。
そのため、多頭飼育をしている方で「この犬では症状が出るが、別の犬ではあまり出ない」と感じることがあります。
また、「低アレルゲン犬種」「毛が抜けにくい犬種」とされる犬であっても、アレルゲンがゼロになるわけではありません。
症状の有無は、犬種名だけではなく、実際の曝露状況と症状の出方をあわせて考える必要があります。
臨床的には猫アレルギーが目立つことが多いです
犬も重要なアレルゲンですが、猫アレルゲン Fel d 1 は空気中に広がりやすく、
衣類や布製品に付着して持ち込まれやすい特徴があります。
そのため、呼吸器症状や喘息悪化の原因としては、猫アレルギーが目立つことがあります。
ただし、犬アレルギーが軽いという意味ではありません。
犬でも咳、鼻炎、喘息悪化が起こることがあり、特に室内飼育、換気不良、布製品の多い環境では注意が必要です。
“毛が抜けにくい犬なら大丈夫”とは限りません
アレルゲンは毛そのものだけでなく、皮膚や唾液、フケなどにも含まれます。
そのため、毛が抜けにくい犬種であっても、アレルギー症状が出ないと断定することはできません。
動物に触れていなくても症状が出ることがあります
犬や猫のアレルゲンは、動物のすぐ近くだけに存在するわけではありません。
衣類、カーテン、ソファ、カーペットなどに付着し、人の移動とともに運ばれることがあります。
そのため、動物を飼っていない家庭、学校、車内、公共空間などでも、
猫や犬のアレルゲンが検出されることがあります。
「何m離れれば安全」とは単純に言えません
動物アレルゲンによる症状は、距離だけで決まるものではありません。
同じ室内かどうか、換気、布製品の多さ、滞在時間、本人の感受性、喘息の有無などが関係します。
感受性の高い方では、直接触れていなくても、動物がいる空間や、動物がいた空間に入るだけで症状が出ることがあります。
布製品に残りやすい
ソファ、カーペット、カーテン、衣類などには、アレルゲンが付着しやすく、室内に残りやすい傾向があります。
人が運ぶことがあります
ペットを飼っている人の衣類などを介して、ペットのいない場所にもアレルゲンが持ち込まれることがあります。
犬・猫アレルギーで咳や喘息が悪化することがあります
動物アレルギーというと、鼻水、くしゃみ、目のかゆみをイメージされる方が多いと思います。
しかし、呼吸器内科では、咳、喘鳴、胸苦しさ、喘息悪化として現れることも少なくありません。
鼻炎・結膜炎
くしゃみ、鼻水、鼻づまり、目のかゆみなどが出ることがあります。
咳・喘息症状
咳、ゼーゼー、息苦しさ、夜間や明け方の咳として現れることがあります。
「風邪が長引いている」と思っていたら喘息のことがあります
とくに、夜間や明け方に咳が出る、動物のいる環境で悪化する、
季節によって変動する、という場合には、咳喘息や喘息が関与していることがあります。
実際には、動物アレルゲン単独ではなく、
花粉、黄砂、PM2.5、感染後咳嗽、鼻炎による後鼻漏などが重なって症状が悪化していることもあります。
衣類や布製品に付着したアレルゲンが問題になることもあります
動物アレルゲンは、動物そのものが目の前にいなくても、
衣類、寝具、羽織もの、毛布などに付着して持ち込まれることがあります。
以前の勤務先で印象に残っている経験
かなり以前の話ですが、喘息で入院中にもかかわらず、
治療してもなかなか症状が改善しない患者さんがいました。
不思議に思っていたところ、患者さんが持参していた丹前に、
猫の毛が大量に付着していたことがありました。
実際には複数の要因が重なっていた可能性がありますが、
動物アレルゲンは衣類や布製品に付着して持ち込まれることがある、
ということを強く印象づけられた経験でした。
これは「ペットが悪い」という話ではありません。
大切なのは、犬や猫と暮らすことの価値を尊重しながら、
症状が悪化する環境や持ち込みやすいアレルゲンを冷静に見直すことです。
犬・猫アレルギーと牛肉・豚肉アレルギーの関係
犬・猫アレルギーは、主に吸入アレルゲンによる鼻炎や喘息症状として問題になります。
一方で、動物由来のアレルゲンには、食物アレルギーと関係するものもあります。
代表的なものに、猫アレルギーと豚肉アレルギーが関係する pork-cat syndrome、
そしてマダニ咬傷後に牛肉・豚肉・羊肉などで症状が出る α-gal症候群 があります。
pork-cat syndrome
猫血清アルブミン(Fel d 2)に感作された方が、
豚肉アルブミン(Sus s 1)と交差反応し、豚肉摂取後に蕁麻疹、腹痛、アナフィラキシーなどを起こすことがあります。
α-gal症候群
マダニ咬傷をきっかけに、牛肉、豚肉、羊肉などの哺乳類肉で遅発性アレルギーを起こす病態です。
食後数時間たってから症状が出ることがあります。
動物アレルギーと肉アレルギーは、同じ話ではありません
犬・猫アレルギーがあるからといって、牛肉や豚肉を避ける必要があるわけではありません。
また、牛肉・豚肉アレルギーがある方すべてに犬・猫アレルギーがあるわけでもありません。
ただし、猫アレルギーがあり、豚肉摂取後に蕁麻疹、腹痛、息苦しさなどを繰り返す場合や、
マダニに刺された後から牛肉・豚肉で症状が出るようになった場合には、専門的な評価が必要です。
検査について
犬・猫アレルギーについては、血液検査で特異的IgEを確認できる場合があります。
また、状況によっては、牛肉、豚肉、α-gal などに対する特異的IgEを検討することもあります。
ただし、検査が陽性でも、それだけで現在の症状の原因と断定できるわけではありません。
逆に、検査が陰性でも、動物由来粒子による刺激症状や気道過敏が関与していることがあります。
「検査だけ」で決まるわけではありません
実際の診断では、症状の時期、動物との接触状況、住環境、食事内容、
食後どのくらいで症状が出るか、マダニ咬傷歴、呼吸機能検査やFeNOなどを合わせて考えます。
特に肉アレルギーでは、すぐに症状が出るタイプと、数時間遅れて出るタイプがあります。
症状の時間経過は、検査結果と同じくらい重要です。
よくあるご質問
Q.動物に触っていないのに症状が出ることはありますか?
はい。犬・猫アレルゲンは衣類や布製品に付着して運ばれることがあり、
動物がいない空間でも検出されることがあります。
Q.猫アレルギーと犬アレルギーは違いますか?
アレルゲンは異なります。
一般には猫アレルゲンの方が空気中に広がりやすく、臨床的にも目立つことがありますが、
犬でも咳、鼻炎、喘息悪化が起こります。
Q.同じ家の犬でも、特定の犬だけで症状が出ることはありますか?
あり得ます。犬アレルゲンの量は犬種だけでなく、個体差、皮膚の状態、唾液やフケの量などによって変わることがあります。
多頭飼育で特定の犬だけに症状を自覚する場合もあります。
Q.犬・猫アレルギーで咳が出ることはありますか?
はい。鼻症状だけでなく、咳、喘鳴、喘息悪化として現れることがあります。
Q.猫アレルギーがあると豚肉も食べられませんか?
通常はそのようなことはありません。
ただし、まれに猫血清アルブミンと豚肉アルブミンの交差反応により、豚肉で症状が出ることがあります。
豚肉摂取後に蕁麻疹、腹痛、息苦しさなどを繰り返す場合は相談が必要です。
Q.牛肉・豚肉アレルギーはマダニと関係しますか?
α-gal症候群では、マダニ咬傷後に牛肉、豚肉、羊肉などの哺乳類肉で遅発性アレルギーが起こることがあります。
食後数時間たってから症状が出る点が特徴です。
Q.検査だけで診断できますか?
いいえ。検査結果だけでなく、症状、環境、食事内容、発症までの時間、
呼吸機能検査などを合わせて判断します。
院長より
犬や猫は、多くの方にとって大切な家族です。
実際、動物と暮らすことで精神的な支えを得ている方も少なくありません。
だからこそ、咳や喘息症状がある時も、
「ペットが悪い」と単純に考えるのではなく、
どの環境で症状が悪化しているのか、どの程度アレルゲンが関与しているのかを冷静に考えることが大切です。
動物アレルゲンは、衣類や布製品に付着して持ち込まれることがあります。
以前の勤務先で経験した、丹前に付着した猫の毛が喘息管理に影響していた可能性のある患者さんのことは、
今でも印象に残っています。
また、多頭飼育の方で「特定の犬だけで症状が出る」と感じることもあります。
犬種名だけでなく、個体差、皮膚の状態、生活環境、接触時間などを含めて考える必要があります。
動物アレルギーという言葉の中には、犬・猫による吸入アレルギーだけでなく、
まれに豚肉や牛肉などの食物アレルギーと関係する病態もあります。
ただし、検査結果だけで原因を決めつけるのは適切ではありません。
症状が出る場所、時期、食事内容、発症までの時間、呼吸機能やFeNOなどを合わせて判断することが大切です。
呼吸器症状が長引く場合は、呼吸器内科でご相談ください。
参考資料
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Shiratsuki R, et al. A Case of Pork-cat Syndrome That Developed as Food-dependent Exercise-induced Anaphylaxis. Acta Derm Venereol. 2020.
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Shishido AA, et al. A Review of Alpha-Gal Syndrome for the Infectious Diseases Physician. Open Forum Infect Dis. 2025.
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Commins SP. Delayed anaphylaxis to alpha-gal, an oligosaccharide in mammalian meat. Allergol Int. 2016.
-
日本アレルギー学会
-
GINA Global Initiative for Asthma
PET ALLERGY / COUGH / ASTHMA
長引く咳や喘息症状についてご相談ください
犬・猫アレルゲンは、鼻症状だけでなく、
咳や喘息悪化に関与することがあります。
長引く咳、夜間症状、動物環境で悪化する症状がある場合は、
呼吸器内科でご相談ください。

