OGAMI INTERNAL MEDICINE CLINIC COLUMN
喘息・副鼻腔炎・好酸球が高いと言われたら
EGPA(好酸球性多発血管炎性肉芽腫症)とは
喘息の診療をしていると、
「血液検査で好酸球が高いと言われた」
「好酸球性副鼻腔炎がある」
「難病ではないでしょうか」
と不安を抱えて相談されることがあります。
その際に鑑別として話題になる病気のひとつが、
EGPA(好酸球性多発血管炎性肉芽腫症)です。
最初にお伝えしたいこと
EGPAは、喘息や好酸球増多と関連する病気ですが、
非常にまれな疾患です。
喘息がある、好酸球が高い、鼻茸があるというだけで、
通常はEGPAではありません。
当院のように地域で喘息・呼吸器診療を行っているクリニックでも、
EGPAとして専門病院と連携する症例はごく限られています。
過度に不安になる必要はありませんが、
どのような症状があるときに注意すべきかを、
呼吸器専門医の立場から解説します。
喘息だけでEGPAとは限りません
喘息や好酸球増多は日常診療でよく見られます。
EGPAはその中でもごく一部のまれな疾患です。
しびれ・筋力低下に注意
EGPAでは、左右非対称のしびれや足の上がりにくさなど、
末梢神経障害が診断のきっかけになることがあります。
診断は病院との連携が必要
血液検査だけで診断できる病気ではありません。
必要に応じて呼吸器内科、膠原病内科、脳神経内科などと連携します。
EGPAとはどんな病気か
EGPAは、
好酸球という白血球の増加と、
血管の炎症(血管炎)を特徴とする病気です。
正式名称は
好酸球性多発血管炎性肉芽腫症
(Eosinophilic Granulomatosis with Polyangiitis)です。
以前は、チャーグ・ストラウス症候群、アレルギー性肉芽腫性血管炎と呼ばれていました。
EGPAは、厚生労働省の
指定難病45
に該当します。
重症度など一定の条件を満たす場合には、
医療費助成制度の対象となることがあります。
喘息やECRS(好酸球性副鼻腔炎)との関係
EGPAでは、
血管炎の症状が出る前から
気管支喘息が先行していることが多くあります。
また、鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎、
いわゆる
ECRS(好酸球性副鼻腔炎)
を合併することもあります。
ここが大切です
EGPAの患者さんに喘息やECRSが多いことは事実です。
しかし逆に、
喘息やECRSの患者さんの大部分はEGPAではありません。
喘息やECRSについては、下記ページもご参照ください。
「好酸球やFeNOが高い=EGPA」ではありません
血液検査で好酸球が高い、喘息検査でFeNOが高い、
鼻茸があるといった所見だけでEGPAと診断されることはありません。
よくある所見
- 喘息がある
- 好酸球が高い
- FeNOが高い
- 鼻茸・副鼻腔炎がある
EGPAで問題になる所見
- 左右非対称のしびれ
- 足が上がりにくい
- 発熱や体重減少
- 皮疹、紫斑
- 肺陰影や心臓病変
好酸球高値やFeNO高値は、
重症喘息やECRSでもよくみられます。
EGPAを考える場合には、
これらに加えて血管炎による全身症状や臓器障害があるかを評価します。
注意したい症状:足から始まるしびれ・筋力低下
EGPAで重要な症状のひとつが、
末梢神経障害です。
神経に栄養を送る細い血管に炎症が起こることで、
しびれや痛み、筋力低下が出ることがあります。
医学的には
多発単神経炎
と呼ばれる形をとることがあり、
一般的な肩こりや腰痛に伴うしびれとは少し様子が異なることがあります。
EGPAで注意したいしびれの特徴
- 左右対称ではなく、片側の足や手から始まる
- 足先、足の甲、すねの外側などにしびれや痛みが出る
- 足の甲が上に持ち上がりにくくなる
- スリッパが脱げやすくなる
- 段差のない場所でつまずく
- 手の一部だけがしびれる、力が入りにくい
喘息+しびれは一度立ち止まって考えます
しびれの原因は、整形外科領域の病気や糖尿病性神経障害など、
EGPA以外のことが多くあります。
ただし、喘息や好酸球増多がある方に、
左右非対称のしびれや足の上がりにくさが出てきた場合には、
血管炎の可能性も考えて評価します。
その他に注意する症状
- 原因不明の発熱が続く
- 強い倦怠感が続く
- 体重が明らかに減る
- 皮膚に赤いぽつぽつ、紫斑、硬いしこりのような発疹が出る
- 喘息発作とは違う咳・息切れや、胸部X線・CTの異常陰影がある
心臓病変は見逃したくない合併症です
EGPAでは、神経や肺だけでなく、
心臓に炎症が及ぶことがあります。
心筋炎、心膜炎、心不全、不整脈などを起こすことがあり、
病気の重症度や予後に関わる重要な臓器病変です。
そのため、EGPAが疑われる場合には、
胸部画像や血液検査だけでなく、
心電図、心エコー、心筋障害をみる血液検査などを含めた評価が必要になります。
こうした評価は、一般診療所だけで完結するものではありません。
必要に応じて、心臓評価も含めて対応できる専門病院へ紹介します。
ANCA(アンカ)という血液検査
EGPAを疑う場合に参考になる検査のひとつに、
MPO-ANCA
という血液検査があります。
ANCAは血管炎に関連する自己抗体の一種です。
EGPAではMPO-ANCAが陽性になることがありますが、
すべての患者さんで陽性になるわけではありません。
ANCA陽性の場合
血管炎としての性質が比較的前面に出やすく、
神経障害や皮膚症状などを伴うことがあります。
ANCA陰性の場合
ANCAが陰性でもEGPAは否定できません。
好酸球による臓器障害、肺陰影、心臓病変などに注意します。
つまり、
ANCA陽性だからEGPA、ANCA陰性だからEGPAではない
とは単純に判断できません。
なお、ANCAは当院で当日に結果が出る検査ではありません。
検査会社へ提出するため結果判明まで日数を要し、
実際には専門病院での精査の一環として評価されることが多い検査です。
診断には専門病院での評価が必要です
EGPAは、
血液検査の一項目だけで診断できる病気ではありません。
好酸球数、CRP、IgE、ANCAなどの血液検査に加えて、
胸部CT、心臓の評価、神経伝導検査、皮膚や神経などの組織検査が必要になることがあります。
呼吸器・循環器内科
喘息、肺陰影、咳・息切れを評価します。
また、心筋炎、心不全、不整脈などの心臓病変が疑われる場合には、
心エコーや心筋障害マーカーなどによる評価も重要です。
膠原病内科
血管炎の本態や免疫異常、全身の臓器障害を総合的に評価し、ステロイドや免疫抑制薬を用いた専門的な全身管理・治療を行います。
脳神経内科
しびれや筋力低下、多発単神経炎などの末梢神経障害に対して、神経伝導検査などを用いた客観的な精密評価を行います。
実際の紹介先は、症状の出方によって異なります。
神経症状が前面に出る場合、肺病変が目立つ場合、全身の血管炎症状が強い場合で、
主に担当する診療科が変わることがあります。
当院では、診察所見、血液検査、胸部X線、これまでの喘息経過をもとに、
EGPAの可能性を考慮し、
必要に応じて大学病院や総合病院の専門外来へ紹介します。
EGPAの治療:ステロイド、免疫抑制薬、生物学的製剤
EGPAの治療は、病気の重症度、障害されている臓器、
再燃の有無などによって異なります。
- 副腎皮質ステロイド
- 免疫抑制薬
- 生物学的製剤
- 神経障害に対する治療やリハビリテーション
近年は、好酸球に関わる炎症を標的とする生物学的製剤が使われるようになり、
治療選択肢が広がっています。
メポリズマブ(ヌーカラ)
IL-5を標的とする生物学的製剤です。
重症喘息だけでなく、EGPAにも保険適応があります。
ベンラリズマブ(ファセンラ)
IL-5受容体を標的とする生物学的製剤です。
既存治療で効果不十分なEGPAに対する治療選択肢として用いられるようになっています。
ただし、EGPAに対する生物学的製剤の導入や調整は、
臓器障害の評価やステロイド・免疫抑制薬との組み合わせを考慮する必要があります。
初期診断や治療方針の決定は、専門病院で行うことが基本です。
当院でできること
当院は一般診療所ですが、呼吸器専門医として、
喘息診療の中でEGPAを疑うべきサインがないかを確認しています。
当院で行える評価
- 喘息の診察
- 血液検査による好酸球の確認
- FeNO測定
- 胸部X線検査
- 治療経過の整理
専門病院へ依頼する評価
- 胸部CTなどの精密画像検査
- 神経伝導検査
- 心エコーなどの心臓評価
- 生検などの組織検査
- 寛解導入治療の方針決定
EGPAが疑われる場合は、
当院だけで診断を完結させるのではなく、
病状に応じて適切な専門病院へ紹介します。
よくあるご質問
Q.好酸球が8〜10%と言われました。EGPAでしょうか?
それだけでEGPAとは判断しません。
好酸球がやや高いことは、喘息やアレルギー性鼻炎、ECRSなどでもよくみられます。
EGPAを疑う場合は、好酸球の著しい増加に加えて、
しびれ、筋力低下、発熱、皮疹、肺陰影、心臓病変などを総合的に評価します。
Q.喘息と副鼻腔炎があります。将来EGPAになりますか?
喘息やECRSがある方の大部分はEGPAにはなりません。
EGPAは非常にまれな病気です。
ただし、喘息の経過中に左右非対称のしびれ、足の上がりにくさ、
原因不明の発熱や皮疹などが出てきた場合は、一度評価が必要です。
Q.手足がしびれます。何科を受診すればよいですか?
しびれの原因は整形外科領域、糖尿病、神経疾患など多岐にわたります。
喘息や好酸球性副鼻腔炎があり、
片側の足先から始まるしびれ、足が上がりにくい、つまずきやすいといった症状がある場合は、
かかりつけの呼吸器内科や膠原病内科に相談するとよいでしょう。
Q.ANCAが陰性ならEGPAではありませんか?
いいえ。EGPAではANCAが陰性の方もいます。
ANCAは重要な参考項目ですが、ANCAだけで診断したり否定したりすることはできません。
症状、好酸球数、画像検査、神経障害、心臓病変、組織検査などを総合して判断します。
Q.ヌーカラやファセンラを使っていればEGPAは心配ありませんか?
ヌーカラやファセンラは好酸球性炎症を抑える生物学的製剤で、
EGPA治療でも用いられる薬剤です。
ただし、喘息治療として使用している場合とEGPA治療として使用する場合では、
投与目的や評価すべき臓器病変が異なります。
治療中でも、しびれ、筋力低下、発熱、皮疹などがあれば主治医へ相談してください。
院長より
当院でも、EGPAとして専門病院と連携する症例はごく限られています。
「好酸球が高い」「FeNOが高い」「副鼻腔炎がある」というだけで、
すぐに難病を疑う必要はありません。
一方で、喘息の経過中に、
左右非対称のしびれ、足の上がりにくさ、発熱、皮疹、原因不明の肺陰影などが出てきた場合には、
一度立ち止まって考える必要があります。
当院では、必要以上に不安をあおるのではなく、
呼吸器専門医として見逃してはいけないサインを確認し、
必要な場合には専門病院と連携して診療を進めます。
ASTHMA / EGPA
喘息に加えて気になる全身症状がある方へ
喘息や好酸球増多がある方の大部分はEGPAではありません。
ただし、左右非対称のしびれ、足の上がりにくさ、発熱、皮疹などがある場合は、診察時にご相談ください。
必要に応じて、呼吸器内科・膠原病内科・脳神経内科などの専門病院と連携して診療を進めます。

