VACCINATION COLUMN

帯状疱疹ワクチンはどちらを選ぶ?
― 生ワクチンとシングリックスの違い

帯状疱疹ワクチンは、近年、定期接種化・自治体助成が進み、
接種を検討される方が増えています。

「生ワクチンとシングリックスは何が違うのか」
「結局どちらがおすすめなのか」
「副反応は強いのか」
といった質問を受ける機会も増えています。

呼吸器・感染症診療の現場でも、
帯状疱疹後神経痛(PHN)で長く苦しむ方は少なくありません。
制度、生ワクチンと組換えワクチンの違い、現在分かっているエビデンスを整理します。

帯状疱疹は「痛み」が残ることがあります

発疹が治った後も、
神経痛が長期間続くことがあります。

現在は2種類のワクチンがあります

生ワクチンと、
組換えワクチン(シングリックス)があります。

当院ではシングリックスをおすすめすることが多いです

効果の高さと持続性を重視する場合、
組換えワクチンが有力な選択肢になります。

帯状疱疹とは?

帯状疱疹は、
子どもの頃にかかった水ぼうそう(水痘)のウイルスが、
加齢や疲労、免疫低下などをきっかけに再活性化して起こる病気です。

水ぼうそうが治った後も、
水痘・帯状疱疹ウイルス(VZV)は体内の神経節、つまり神経の根元に生涯にわたって潜伏しています。

それが再活性化して神経を伝わって皮膚に出てくるため、
片側性の発疹と、強い神経痛を伴うことがあります。

原因

水痘・帯状疱疹ウイルス(VZV)

特徴

片側性の痛みと発疹

問題点

神経痛が長期間続くことがあります

帯状疱疹後神経痛(PHN)が問題になります

帯状疱疹では、
発疹が治った後も、
「焼けるような痛み」
「ピリピリする痛み」
「服が触れるだけで痛い」
といった神経痛が長期間続くことがあります。

これを帯状疱疹後神経痛(PHN)と呼びます。

特に高齢者ではPHNへ移行しやすく、
日常生活へ大きく影響することがあります。

帯状疱疹はどうやってうつる?

帯状疱疹そのものが、周囲の人に「帯状疱疹」としてうつるわけではありません。

ただし、
水疱(ぶつぶつ)の中の液体に直接触れることで、
水ぼうそう未感染・未接種の方へ、
「水ぼうそう」として感染する可能性があります。

水疱が乾燥してかさぶたになるまでは、
乳幼児、妊婦、免疫が低下している方との接触には注意が必要です。

福岡市の助成制度と定期接種

帯状疱疹ワクチンは、
2025年度より段階的に定期接種化が進められています。

国の定期接種は原則として65歳の方が対象ですが、
経過措置として、年度ごとに70歳、75歳、80歳、85歳、90歳、95歳、100歳となる方も対象となります。

福岡市では50歳・55歳・60歳への独自助成があります

福岡市では、
国の定期接種とは別に、
任意接種助成として50歳、55歳、60歳の方への助成制度も設けられています。

つまり、
「50歳になったら国の定期接種になる」という意味ではありません。
国の定期接種と、福岡市独自の任意接種助成は制度が異なります。

対象年齢、接種期間、自己負担額は年度ごとに変わる可能性があります。
接種前には、必ず福岡市の最新情報をご確認ください。

生ワクチン

  • 1回接種
  • 福岡市助成後の自己負担:4,900円
  • 比較的安価

シングリックス

  • 2回接種
  • 通常、2か月以上あけて2回目を接種
  • 福岡市助成後の自己負担:12,000円/回
  • 2回合計:24,000円

シングリックスは2回目まで計画的に

シングリックスは2回接種で完了するワクチンです。
通常は1回目から2か月以上あけて2回目を接種します。

助成制度を利用する場合、
接種期間内に2回目まで終える必要があります。
期間を過ぎると2回目が助成対象外になることがあります。

体調不良や予定変更で2か月ぴったりに接種できないことはありますが、
できるだけ早めに2回目の予定を確保しておくことをおすすめします。

生ワクチンとシングリックスの違い

項目 生ワクチン シングリックス
種類 生ワクチン 組換えワクチン
接種回数 1回 2回(通常2か月以上あける)
予防効果 接種1年後で6割程度、5年後で4割程度 接種1年後・5年後とも9割程度
効果持続 5年程度で大きく低下 10年時点でも7割程度の効果
副反応 比較的軽い 局所痛・発熱・倦怠感が比較的多い
免疫低下状態 禁忌(接種不可) 接種可能な場合が多い

シングリックスは「アジュバント」を使用しています

シングリックスは、
ウイルス成分に加え、
強い免疫反応を引き出すための「アジュバント」を含むワクチンです。

このため、
発熱や局所痛などの副反応が比較的出やすい一方、
非常に高い予防効果につながっています。

生ワクチンは免疫抑制状態では接種できません

生ワクチンは、
化学療法中、
高用量ステロイド内服中、
免疫抑制薬使用中など、
免疫機能が低下している方では禁忌となります。

たとえば、
悪性腫瘍の治療中、
関節リウマチや潰瘍性大腸炎などで免疫を抑える薬を使用している方、
生物学的製剤やJAK阻害薬を使用している方では注意が必要です。

ただし、喘息やCOPDで使用する吸入ステロイドは、
通常、生ワクチンの禁忌にはなりません。
問題になるのは主に内服ステロイド、注射薬、生物学的製剤、免疫抑制薬などです。

結局どちらがおすすめ?

「結局どちらがいいですか?」
という質問は非常によく受けます。

当院ではシングリックスをおすすめすることが多いです

生ワクチンは、
1回接種で済み、
比較的安価で、
副反応も比較的軽いという利点があります。

一方で、
予防効果と持続性は、
シングリックスの方が明らかに高いとされています。

特に、
「帯状疱疹後神経痛をできるだけ避けたい」
「しっかり予防したい」
「免疫低下が気になる」
という方には、
当院ではシングリックスをおすすめすることが多いです。

生ワクチン向き

  • 1回で終えたい
  • 費用を抑えたい
  • 副反応を抑えたい
  • 免疫抑制状態ではない

シングリックス向き

  • 予防効果を重視したい
  • PHNを避けたい
  • 免疫低下がある、または今後予想される
  • 長期効果を重視したい

副反応について

特にシングリックスでは、
接種後の局所反応が比較的強く出ることがあります。

局所反応

腕の痛み、腫れ、赤み

全身症状

発熱、倦怠感、筋肉痛、悪寒

経過

多くは数日で改善

「副反応が強い=危険」という意味ではありません

シングリックスでは、
免疫反応が強く起きるため、
発熱や局所痛が比較的出やすいと考えられています。

院長およびスタッフは既にシングリックスを接種済みですが、
その経験からは、
「COVID-19ワクチンに近い副反応が出ることがあります」
と説明することが多いです。

ただし、
多くは数日以内に改善します。

副反応がつらい場合の対応

接種後の発熱や痛みがつらい場合には、
アセトアミノフェンやイブプロフェンなどの解熱鎮痛薬で対応できることがあります。

持病や内服薬によって使いやすい薬が異なりますので、
不安な方は接種時にご相談ください。
必要に応じて、あらかじめ解熱鎮痛薬を処方することも可能です。

認知症リスクとの関連が研究されています

最近、
帯状疱疹ワクチンと認知症リスク低下との関連を示唆する研究が注目されています。

ただし「認知症予防ワクチン」と断定できる段階ではありません

海外では、
シングリックス接種者で、
将来的な認知症診断リスクが低かったとする研究報告があります。

生ワクチンと比較した場合、
シングリックス接種群で認知症診断時期が遅かった、
というNature Medicine誌の報告もあります。

ただし、
これは観察研究・自然実験研究であり、
「ワクチンが認知症を直接予防する」と断定できる段階ではありません。

ヘルペスウイルス再活性化、
神経炎症、
免疫応答などとの関連が学術的に研究されている段階です。

したがって、
現時点での帯状疱疹ワクチンの第一目的は、
あくまで帯状疱疹とPHNの予防です。

よくある質問

Q.帯状疱疹はうつりますか?

周囲の人に「帯状疱疹」としてうつるわけではありません。

ただし、
水疱の液に直接触れることで、
水ぼうそうにかかったことがない方やワクチン未接種の方に、
「水ぼうそう」として感染する可能性があります。

水疱が乾燥してかさぶたになるまでは、
乳幼児、妊婦、免疫が低下している方との接触には注意しましょう。

Q.シングリックスは高いですが価値はありますか?

費用は高めですが、
PHNを含めた予防効果の高さと持続性を重視する方では、
十分検討価値があります。

Q.生ワクチンではダメですか?

生ワクチンも有効です。

ただし、
予防効果と持続性は、
一般にシングリックスの方が高いとされています。

また、免疫抑制状態にある方では生ワクチンは接種できません。

Q.過去に帯状疱疹にかかったことがあっても接種できますか?

はい。過去に帯状疱疹にかかったことがある方でも、
再発予防のためにワクチン接種を検討できます。

ただし、発症直後に急いで接種するものではありません。
発疹や痛みの経過、体調、治療内容を確認したうえで接種時期を判断します。

Q.シングリックスは18歳でも打てますか?

シングリックスは、
免疫低下など帯状疱疹リスクが高い18歳以上にも適応があります。

ステロイド内服、
免疫抑制薬、
生物学的製剤、
抗がん剤治療などを受けている方では、
主治医と相談の上で接種を検討します。

Q.吸入ステロイドを使っています。生ワクチンは禁忌ですか?

喘息やCOPDで使用する吸入ステロイドは、
通常、生ワクチンの禁忌にはなりません。

ただし、
高用量の内服ステロイド、
注射薬、
免疫抑制薬、
生物学的製剤などを使用している場合は注意が必要です。

Q.シングリックスは副反応が強いですか?

腕の痛み、
発熱、
倦怠感などは比較的出やすいです。

ただし、
多くは数日以内に改善します。
必要に応じて解熱鎮痛薬で対応できます。

Q.帯状疱疹ワクチンで認知症予防できますか?

現時点では、
「認知症予防効果が確立した」とは言えません。

ただし、
シングリックス接種者で認知症診断リスク低下との関連を示唆する研究は報告されており、
学術的に非常に注目されています。

現時点では、
帯状疱疹ワクチンの主目的は、
帯状疱疹とPHNを予防することです。

参考資料


  • 福岡市:令和8年度 帯状疱疹の予防接種について

  • 厚生労働省:帯状疱疹ワクチン
  • Oxman MN, et al. A Vaccine to Prevent Herpes Zoster and Postherpetic Neuralgia in Older Adults.
    N Engl J Med. 2005.
  • Lal H, et al. Efficacy of an Adjuvanted Herpes Zoster Subunit Vaccine in Older Adults.
    N Engl J Med. 2015.
  • Cunningham AL, et al. Efficacy of the Herpes Zoster Subunit Vaccine in Adults 70 Years of Age or Older.
    N Engl J Med. 2016.
  • Taquet M, et al. The recombinant shingles vaccine is associated with lower risk of dementia.
    Nature Medicine. 2024.

VACCINATION

帯状疱疹ワクチンについてご相談ください

生ワクチンとシングリックスには、
それぞれ特徴があります。

年齢、
持病、
免疫状態、
副反応への考え方、
費用感などを踏まえて、
一緒に選択していきます。