INFECTIOUS DISEASE COLUMN
麻疹(はしか)が増えています
― 大人はMRワクチンをどう考えるべきか
東京を中心に麻疹(はしか)の報道が増え、
福岡でも注意が必要な状況です。
麻疹は非常に感染力が強い感染症ですが、
一方で「不安だから全員がすぐMRワクチン」という話でもありません。
大人はまず接種歴を確認し、必要性を冷静に判断することが大切です。
麻疹は空気感染します
主たる脅威は空気感染です。
通常の手洗いやサージカルマスクだけでは十分に防げません。
大人はまず接種歴確認です
母子手帳や接種記録を確認し、
必要に応じて抗体検査を検討します。
麻疹疑いは直接来院しないでください
発熱・発疹・接触歴がある場合は、
保健所または医療機関へ事前相談が必要です。
重要:麻疹が疑われる方はネット予約ではなく、必ず事前相談をお願いします
麻疹は空気感染を起こすため、
事前連絡なしに一般外来へ来院すると、
待合室やビル内で感染が広がる可能性があります。
高熱、咳、鼻汁、結膜充血、発疹があり、
麻疹患者との接触歴や海外渡航歴がある方は、
ネット予約ではなく、まずお住まいの地域の保健所、
または医療機関へ事前に電話でご相談ください。
当院電話番号:092-821-0053
麻疹は「非常に感染力が強い感染症」です
麻疹(はしか)は、
麻疹ウイルスによる急性の全身感染症です。
麻疹の最大の脅威は、
ウイルスを含む微小な粒子が空気中に漂い、
それを吸い込むことで感染する空気感染です。
主たる感染経路は空気感染です
麻疹では、
免疫がない人が同じ空間にいるだけで感染する可能性があります。
そのため、
手洗いや接触対策だけでは不十分であり、
通常のサージカルマスクだけで完全に防ぐことも困難です。
一般外来や待合室での曝露を避けるため、
麻疹が疑われる場合は直接来院せず、必ず事前相談が必要です。
感染力は桁違いに強いと考えられています
感染症の広がりやすさを示す指標として、
基本再生産数(R0)があります。
インフルエンザはおおむね1〜2程度、
COVID-19は流行株によって異なりますが数人程度とされる一方、
麻疹は12〜18程度とされ、
非常に感染力が強い感染症です。
感染力
非常に強い
主な感染経路
空気感染
予防
ワクチンが最重要
麻疹の典型的な経過
麻疹では、
潜伏期、カタル期、発疹期、回復期という流れで症状が進むことが典型的です。
潜伏期間
- 通常10〜12日前後
- この時期は症状が目立たないことが多い
- ワクチン歴によっては経過が変わることがあります
カタル期
- 38℃前後の発熱
- 咳
- 鼻汁
- 結膜充血
- 強い眩しさ(羞明)
- 目やに
発疹が出る前から感染力があります
麻疹では、
発疹が出る前の「風邪のように見える時期」から感染力があります。
この時期に、発熱、咳、鼻汁、結膜充血、強い眩しさを伴う眼症状がそろう場合は注意が必要です。
コプリック斑
- 発疹が出る1〜2日前ごろ
- 頬の粘膜に出る白い小さな斑点
- 発疹が全身に広がる頃には急速に消えてなくなります
発疹期
- 耳の後ろ、首、顔から発疹が出始めます
- 発疹は体幹・四肢へ広がります
- 40℃近い猛烈な高熱
- 強い全身倦怠感
「二峰性発熱」が特徴的です
麻疹では、
3〜4日続いた熱が一度少し下がった直後、
発疹の出現と同時に、再び40℃近い猛烈な高熱になることがあります。
高熱、咳、鼻汁、結膜充血、強い眩しさに加えて発疹が出てきた場合は、
麻疹を考える重要なサインです。
大人では「修飾麻疹」にも注意が必要です
過去にMRワクチンを1回だけ接種している方や、
免疫が不十分に残っている方では、
典型的な麻疹より症状が軽く出ることがあります。
修飾麻疹とは
修飾麻疹とは、
麻疹に感染していても、
発熱や発疹が典型的でなかったり、
症状が比較的軽かったりする状態です。
過去にワクチンを1回接種している大人などでみられることがあります。
潜伏期間が通常より長くなることもあり、
「典型的な麻疹ではなさそうだから大丈夫」とは言い切れません。
周囲で麻疹患者が出ている場合や、
海外渡航歴がある場合には、
症状が軽くても事前に電話で相談することが重要です。
麻疹は肺炎・脳炎などで重症化することがあります
麻疹は、
「発熱と発疹だけの病気」ではありません。
肺炎、脳炎、中耳炎、腸炎などを合併し、
先進国でも重症化することがあります。
呼吸器内科として特に注意するのは麻疹肺炎です
大人の麻疹で重要な合併症の一つが麻疹肺炎です。
激しい咳、息苦しさ、酸素低下を伴い、
ときに命に関わることがあります。
麻疹ウイルスそのものによる肺炎だけでなく、
二次性の細菌性肺炎を合併することもあります。
麻疹肺炎
激しい咳、呼吸困難、酸素低下を来すことがあります。
脳炎
意識障害やけいれんを伴うことがあります。
中耳炎・腸炎
小児だけでなく成人でも合併することがあります。
大人はMRワクチンをどう考えるべきか?
麻疹流行のニュースが出ると、
「今すぐMRワクチンを打った方がいいですか?」
という相談が増えます。
まずは接種歴確認です
大人の方はまず、
- 母子手帳
- 接種記録
- 過去の麻疹罹患歴
- 職場や学校でのワクチン記録
を確認することが重要です。
2回接種済み
原則として、
慌てて追加接種を考える必要はありません。
不明・1回のみ
まず抗体検査で免疫の有無を確認し、
必要に応じて任意接種を検討します。
ワクチン不足を避けるため、まず抗体検査を検討します
MRワクチンには供給制限が生じることがあります。
不安な大人が一斉に接種を希望すると、
1歳児や就学前児の定期接種に影響する可能性があります。
そのため、
接種歴が不明、または1回のみと思われる大人では、
まず血液検査で麻疹抗体を確認し、
免疫が不十分な場合に接種を検討する、という順序が現実的です。
現在の任意接種は原則としてMRワクチンです
現在、国内では麻疹単体ワクチンは一般診療で実質的に流通しておらず、
大人への任意接種も原則としてMRワクチンを使用します。
MRワクチンは麻疹だけでなく風疹の予防にもなります。
ただし、ワクチンの在庫状況は日々変動するため、
接種を希望される場合は事前確認が必要です。
大人の世代別の目安
麻疹ワクチンの定期接種制度は時代によって変わってきたため、
生まれた年代によって免疫状況の目安が異なります。
| 世代の目安 | 考え方 | 対応 |
|---|---|---|
| 1977年以前生まれ |
既感染者が多い世代ですが、 免疫がないまま大人で麻疹にかかると重症化するリスクがあります。 |
流行地域への移動前や接触リスクがある場合は、 罹患歴だけで判断せず抗体検査を検討します。 |
| 1978年〜1990年前半生まれ |
1回接種世代にあたることが多く、 年数の経過とともに免疫が弱まっている可能性があります。 |
接種歴確認に加え、 必要に応じて抗体検査を検討します。 |
| 1990年代後半以降生まれ | 2回接種の機会がある世代です。 | 母子手帳などで2回接種を確認します。 |
年代だけで断定はできません
上記はあくまで目安です。
実際には、接種歴、罹患歴、地域、留学・就職時の追加接種歴などで変わります。
「何年生まれだから絶対大丈夫」
「何年生まれだから必ず接種」
と決めつけず、記録確認と抗体検査を組み合わせて判断します。
麻疹抗体検査は「保険」と「自費」で扱いが異なります
麻疹流行のニュースを見て、
「自分に免疫があるか知りたい」
という相談は増えます。
ただし、
麻疹抗体検査は、
検査目的によって保険診療になる場合と、
自費診療になる場合があります。
原則として自費になるケース
- 自分に免疫があるか確認したい
- 海外渡航前に確認したい
- 職場提出用に確認したい
- 流行報道を見て不安になった
- ワクチン接種前に確認したい
保険・行政対応になり得るケース
- 麻疹患者との濃厚接触
- 麻疹疑い患者として診療上必要
- 保健所の接触者調査対象
- 発熱・発疹など症状がある
- 医療機関・行政指示で必要
「不安だから確認したい」は原則として自費です
麻疹抗体検査は、
「健康診断的に確認したい」
「流行報道を見て不安」
という理由のみでは、
原則として保険適応にはなりません。
一方で、
発熱・発疹など麻疹を疑う症状があり、
診療上必要と判断される場合や、
保健所の接触者調査の対象となった場合には、
保険診療や行政対応となることがあります。
最終的な扱いは、
症状、接触歴、検査目的、保健所判断によって変わります。
子どもの定期接種は非常に重要です
麻疹ワクチンで最も優先されるべきなのは、
定期接種対象の小児です。
第1期
1歳の1年間
第2期
小学校入学前の1年間
当院では小児定期接種は行っていません
当院では小児定期接種は行っておりません。
小児のMRワクチンについては、
かかりつけ小児科へご相談ください。
大人の不安による任意接種希望が集中すると、
子どもの定期接種に必要なMRワクチンの供給へ影響する可能性があります。
まずは接種歴確認と抗体検査を優先しましょう。
SSPEという重い合併症があります
麻疹は、
「発疹が出るだけの病気」ではありません。
数年後に、
SSPE(亜急性硬化性全脳炎)という重篤な神経疾患を起こすことがあります。
特に乳幼児感染で重要です
特に乳幼児期に麻疹に感染した場合、
数年後にSSPEを発症するリスクが問題になります。
SSPEは進行性の脳炎であり、
けいれん、認知機能低下、運動障害などを来す重い病気です。
子どものMR定期接種を確実に行うことは、
麻疹そのものだけでなく、将来の重い合併症を防ぐ意味でも重要です。
当院での対応
麻疹が疑われる場合、直接来院しないでください
麻疹は非常に感染力が強く、
空気感染を起こします。
当院は一般的なビルクリニックであり、
陰圧隔離室や専用隔離動線を有していません。
そのため、
- 発熱
- 咳
- 鼻汁
- 結膜充血
- 強い眩しさを伴う眼症状
- 発疹
- 麻疹患者との接触歴
- 海外渡航歴
- ワクチン未接種または接種歴不明
などがあり、
麻疹が疑われる場合には、
一般外来へ直接来院しないようお願いいたします。
麻疹疑いの方は、ネット予約ではなく事前相談です
麻疹が疑われる方がネット予約で来院されると、
待合室やビル内で他の患者さんへ感染が広がる可能性があります。
麻疹が疑われる場合は、
ネット予約を使用せず、必ず事前に電話でご相談ください。
当院電話番号:092-821-0053
麻疹が強く疑われる場合は、保健所への相談が最も安全です
麻疹患者との接触歴や海外渡航歴があり、
二峰性発熱、発疹、咳、鼻汁、結膜充血などがそろう場合は、
麻疹の可能性が高くなります。
このような場合は、
当院へお電話をいただくのと並行して、
あるいは直接、
お住まいの地域の保健所へご相談ください。
福岡市の場合は、
各区の保健福祉センターや福岡市の感染症相談窓口が相談先になります。
隔離受診が可能な医療機関や受診方法について、
保健所の指示を受けることが最も安全です。
公共交通機関を利用して医療機関へ直接向かうことは避けてください。
東京都でも同様の注意喚起が行われています
東京都保健医療局も、
麻疹患者の発生に関連して、
発熱や発疹など麻疹を疑う症状がある場合には、
事前連絡なく医療機関を受診しないよう注意喚起しています。
これは東京だけの話ではなく、
福岡でも同様に重要な感染対策です。
麻疹が疑われる場合は、
直接来院ではなく、事前相談をお願いします。
お電話をいただいた場合の対応
お電話で症状、発疹の有無、接触歴、渡航歴、ワクチン接種歴などを確認します。
当院は隔離スペースのないビルクリニックのため、
麻疹が強く疑われる場合には、
当院での通常診療ではなく、
保健所や隔離対応が可能な医療機関への相談をご案内する場合があります。
これは診療拒否ではなく、
他の患者さん、ビル利用者、スタッフへの感染拡大を防ぐための対応です。
よくある質問
Q.麻疹はどれくらい感染力が強いのですか?
非常に強い感染力を持ち、
主に空気感染が問題になります。
免疫がない人が同じ空間にいるだけで感染する可能性があります。
Q.大人もMRワクチンを打つべきですか?
まずは接種歴確認が重要です。
2回接種済みなら追加接種を急ぐ必要は通常ありません。
接種歴が不明、または1回のみの場合は、
まず抗体検査を検討し、免疫が不十分な場合に接種を考えます。
Q.麻疹抗体検査は保険でできますか?
「自分に免疫があるか知りたい」
「流行が心配だから確認したい」
という目的では、原則として自費になります。
一方で、麻疹疑いとして診療上必要な場合や、
保健所の接触者調査の対象となる場合には、
保険診療や行政対応となることがあります。
Q.麻疹っぽい時はどうすればいいですか?
直接来院せず、
まず電話で相談してください。
接触歴や渡航歴があり、発熱と発疹があるなど麻疹が強く疑われる場合は、
お住まいの地域の保健所へ相談し、
隔離受診が可能な医療機関や受診方法の指示を受けることが最も安全です。
Q.子どものMRワクチンはできますか?
当院では小児定期接種は行っていません。
小児のMRワクチンは、かかりつけ小児科へご相談ください。
Q.麻疹単体ワクチンはありますか?
現在、国内では麻疹単体ワクチンは一般診療で実質的に流通していません。
大人への任意接種も、原則としてMRワクチンを使用します。
Q.SSPEとは何ですか?
SSPE(亜急性硬化性全脳炎)は、
麻疹感染後、数年たってから発症することがある重い脳炎です。
けいれん、認知機能低下、運動障害などを来し、
進行性で重篤な経過をたどることがあります。
Q.SSPEは大人でも発症しますか?
はい。
SSPEは「子どもの時に感染した麻疹」が、
数年から十数年後に発症する病気のため、
成人になってから診断されることもあります。
特に乳幼児期に麻疹へ感染した場合に、
SSPEのリスクが高いことが知られています。
一方で、
「大人になって麻疹にかかったからSSPEになりやすい」
という単純な話ではありません。
だからこそ、
小児期のMRワクチン定期接種が極めて重要になります。
参考資料
-
厚生労働省:麻しん(はしか)について
:症状、感染経路、合併症、感染可能期間などの一般向け情報 -
厚生労働省:MRワクチン
:定期接種、MRワクチン、SSPEなどに関する情報 -
厚生労働省:麻しんに関するQ&A
:一般向けの麻しんQ&A -
国立健康危機管理研究機構 感染症情報提供サイト:麻しんQ&A
:臨床症状、修飾麻しん、コプリック斑などの詳しい解説 -
福岡市:国内で麻しん(はしか)が急増しています
:福岡市内での注意喚起、受診時の事前連絡、保健所連携に関する情報 -
東京都感染症情報センター:麻しんの流行状況
:東京都における最新の麻しん発生状況 -
東京都保健医療局:麻しん患者の発生について
:医療機関受診前の連絡、公共交通機関利用を避けることなどの注意喚起
INFECTIOUS DISEASE
発熱・発疹で麻疹が心配な方へ
麻疹が疑われる場合には、
一般外来へ直接来院せず、
ネット予約も使用せず、
まず電話または保健所へご相談ください。
当院は一般的なビルクリニックであり、
麻疹疑い患者さんを通常外来で隔離診療する設備はありません。
強く疑われる場合は、保健所の指示に従い、
隔離受診が可能な医療機関での対応が最も安全です。

