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RESPIRATORY & INFECTIOUS DISEASE COLUMN
「ただの風邪」が肺の負担になることがあります
― 呼吸器の持病がある大人が知っておきたいRSVワクチン
RSウイルス感染症は、一般には「子どもの病気」と思われがちです。
しかし実際には、大人にも感染します。
特にCOPD、喘息、間質性肺炎、在宅酸素療法中の方、
心不全や糖尿病などの持病がある方では、
肺炎や呼吸器疾患の悪化につながることがあります。
大人にも感染します
RSウイルスは小児だけの感染症ではありません。
成人や高齢者でも感染します。
呼吸器疾患では悪化の原因に
COPDや喘息では、RSウイルス感染をきっかけに
咳、痰、息切れが悪化することがあります。
成人では自費接種です
成人向けRSVワクチンは任意接種です。
必要性は年齢や持病に応じて個別に考えます。
冬や季節の変わり目に、風邪のあと咳が長引く方へ
風邪をひいたあと、咳だけが何週間も続く、
痰が増える、息切れが強くなる、
発作時の吸入薬を使う回数が増える。
そのような経験はないでしょうか。
「年齢のせいかな」
「ただの風邪だったかな」
と思っていた症状の中に、
RSウイルス感染症が関係していることがあります。
RSウイルスは冬を中心に、季節の変わり目にも流行することがあります。
呼吸器の持病がある方では、知っておきたい感染症です。
RSウイルスとは
RSウイルスは、呼吸器に感染するウイルスです。
乳幼児では細気管支炎や肺炎の原因としてよく知られています。
そのため「子どもの病気」という印象が強いかもしれません。
しかし、RSウイルスは大人にも感染します。
健康な成人では軽い風邪症状で済むこともありますが、
高齢者や持病のある方では肺炎や入院につながることがあります。
「子どもの病気」だけではありません
大人のRSウイルス感染症は、
インフルエンザやCOVID-19のように名前がついて診断されることばかりではありません。
実際には、
「風邪」
「気管支炎」
「COPD増悪」
「喘息悪化」
として診療されている中に、
RSウイルス感染症が含まれていることがあります。
感染する人
小児だけでなく成人にも感染します。
主な症状
発熱、鼻水、咳、痰、息切れなどです。
注意が必要な方
高齢者、呼吸器疾患、心疾患、糖尿病などのある方です。
なぜ大人で問題になるのか
健康な若い成人では、RSウイルスに感染しても軽い風邪で済むことが多いです。
一方で、次のような方では、RSウイルス感染症が重くなったり、
持病の悪化につながったりすることがあります。
呼吸器疾患のある方
- COPD
- 喘息
- 間質性肺炎
- 気管支拡張症
- 在宅酸素療法(HOT)を行っている方
その他の持病がある方
- 高齢者
- 心不全などの心疾患
- 糖尿病
- 慢性腎臓病
- 免疫を抑える薬を使用している方
心臓の持病や糖尿病がある方も注意が必要です
RSウイルス感染症は、肺だけの問題ではありません。
感染をきっかけに、心不全が悪化したり、
糖尿病の血糖コントロールが乱れたりすることがあります。
持病がドミノ倒しのように悪化し、
体力が一気に落ちてしまうこともあります。
当院に通院中の方はもちろん、
他院で心臓病や糖尿病の治療を受けている方でも、
呼吸器の持病を併せ持つ場合にはご相談いただけます。
主治医の先生にもご確認のうえでご相談いただくと、よりスムーズです。
COPD・喘息では「ただの風邪」で済まないことがあります
COPDや喘息では、ウイルス感染をきっかけに症状が悪化することがあります。
咳が増える、痰が増える、息切れが強くなる、
発作時の吸入薬を使う回数が増える。
こうした変化は、呼吸器疾患が悪化しているサインです。
COPDでは、増悪を繰り返すことが問題です
COPDでは、ウイルス感染をきっかけに急激に症状が悪化することがあります。
これをCOPD増悪、つまり急激な悪化と呼びます。
COPD増悪では、
咳、痰、息切れ、発熱、動いた時の苦しさが強くなり、
吸入薬、抗菌薬、ステロイド、酸素投与、入院治療が必要になることがあります。
COPDの問題は、増悪を繰り返すことで、
階段を一段ずつ下りるように肺機能が低下していくことです。
その結果、元の状態まで完全には戻らなくなる方もいます。
RSウイルスは、そのきっかけになるウイルスの一つです。
喘息では、風邪をきっかけに発作が悪化することがあります
喘息の方では、RSウイルス感染をきっかけに、
激しい咳き込みや喘鳴、つまりゼーゼーする呼吸が起こり、
急激に発作が悪化することがあります。
普段は落ち着いている方でも、
風邪をきっかけに夜間の咳が増えたり、
発作時の吸入薬を使う回数が増えたりすることがあります。
COPD
ウイルス感染をきっかけに息切れや痰が悪化し、
増悪につながることがあります。
喘息
風邪をきっかけに咳や喘鳴が悪化し、
発作時の吸入薬が増えることがあります。
間質性肺炎
感染をきっかけに呼吸状態が悪くなることがあり、
注意が必要です。
大人ではRSウイルスと診断されにくいことがあります
成人のRSウイルス感染症は、
症状だけではインフルエンザ、COVID-19、一般的な風邪と区別しにくいことがあります。
また、大人では子どもと比べて鼻や咽頭に出るウイルス量が少なく、
実際には感染していても、検査キットでは陰性と出てしまう限界があります。
当院では成人のRSウイルス検査は通常行っていません
成人では、RSウイルス検査が一般外来で保険診療として使いにくい場面があります。
また、検査を行っても陰性だから必ずRSウイルスではない、と言い切れない場合があります。
そのため当院では、成人のRSウイルス検査は通常行っていません。
検査名をつけることよりも、
呼吸器疾患の悪化を早く見つけ、
咳、痰、息切れ、酸素化、発熱、聴診所見などを総合的に見て、
必要な治療につなげることを重視しています。
ただし、肺炎などで入院が必要となった場合には、
入院先の医療機関で原因検索としてRSウイルス検査を行うことがあります。
検査結果だけでなく、経過全体を見て判断します
呼吸器診療では、検査キットの結果だけに頼るのではなく、
普段の持病の状態、周囲の流行状況、症状の経過、
酸素の状態、胸部X線の必要性などを総合的に見て判断します。
「RSウイルスかどうか」だけでなく、
今の呼吸状態が危険かどうか、治療を強める必要があるかどうかを見極めることが大切です。
成人向けRSVワクチンとは
RSVワクチンは、RSウイルス感染症の重症化を防ぐことを目的としたワクチンです。
日本では成人向けRSVワクチンとして、
アレックスビーやアブリスボなどが使用されています。
今後も新しいタイプのワクチンを含め、選択肢が増えていく流れです。
成人では任意接種、つまり自費接種です
成人向けRSVワクチンは、現時点では任意接種です。
インフルエンザワクチンのように、広く定期接種として行われているものではありません。
そのため、当院では自費接種となります。
すべての方に一律におすすめするものではありません。
なお、お住まいの自治体によっては、
今後一部助成などが始まる可能性もあります。
最新情報は自治体の広報などもご確認ください。
年齢、COPDや喘息などの持病、肺炎や入院歴、
冬や季節の変わり目に悪化しやすいか、
費用に見合う予防効果を期待できるかを見ながら、
個別に考えるワクチンです。
60歳以上だけでなく、重症化リスクのある成人でも検討されます
成人向けRSVワクチンは、60歳以上の方を中心に検討されてきました。
近年は、60歳未満であっても、
慢性肺疾患、慢性心血管疾患、糖尿病、慢性腎臓病、
免疫不全状態など、RSウイルス感染症が重症化するリスクが高い方にも
接種対象が広がっています。
若い方でも、重い呼吸器疾患や複数の持病がある場合には、
診察時にご相談ください。
まずは1回接種するワクチンです
RSVワクチンは、まずは1回接種するワクチンです。
現在のデータでは、
1回の接種で少なくとも2シーズン、つまり約2年程度は
予防効果が持続することが示されています。
そのため現時点では、
インフルエンザワクチンのように毎年秋に接種するワクチンとは考えられていません。
今後、効果の持続期間や追加接種の考え方については、
さらにデータが蓄積されていくと考えられます。
副反応について
主な副反応として、
接種部位の痛み、赤み、腫れ、軽度の発熱、だるさなどが報告されています。
多くは数日以内に自然に軽快しますが、
強い症状が続く場合や、気になる症状がある場合は医療機関へご相談ください。
他のワクチンとの接種スケジュール
インフルエンザワクチン、新型コロナワクチン、肺炎球菌ワクチンなどと
同時接種できる場合があります。
ただし、年齢、体調、ワクチンの種類、副反応の出方を見分けたいかどうかによって、
同じ日に接種するか、日を分けるかを考えます。
接種スケジュールについても、診察時またはお電話でご相談ください。
妊婦向けRSVワクチンについて
RSVワクチンには、成人の重症化予防を目的としたものだけでなく、
妊婦さんに接種して、生まれてくる赤ちゃんをRSウイルス感染症から守る目的のものがあります。
2026年度から、妊婦さんへのRSウイルス母子免疫ワクチンは、
予防接種法に基づく定期接種の対象になっています。
当院では妊婦向けRSVワクチンは接種していません
当院では、妊婦さんを対象としたRSウイルス母子免疫ワクチンの接種は行っていません。
妊娠中のRSVワクチンについては、
産婦人科、分娩予定施設、または妊婦健診を受けている医療機関でご相談ください。
当院で扱う場合は、主に成人・高齢者・呼吸器疾患をお持ちの方の
RSVワクチン相談になります。
当院でRSVワクチンを検討しやすい方
RSVワクチンは自費接種であり、
当院でもすべての方へ一律に勧めるものではありません。
ただし、呼吸器疾患をお持ちの方の中には、
RSウイルス感染症が単なる風邪では終わらない方がいます。
相談をおすすめしやすい方
- 60歳以上の方
- COPDがある方
- 喘息があり、風邪で悪化しやすい方
- 間質性肺炎がある方
- 気管支拡張症がある方
- 在宅酸素療法(HOT)を行っている方
- 肺炎で入院したことがある方
- 冬や季節の変わり目に風邪をひくと咳が長く続く方
- 心不全、糖尿病、慢性腎臓病などがある方
- 免疫を抑える薬を使用している方
特にCOPDや在宅酸素療法中の方では、
RSウイルス感染による呼吸状態の悪化を防ぐ意義が大きい可能性があります。
売り込みではなく、リスクの高い方に知ってほしいワクチンです
RSVワクチンは自費で高額です。
そのため、当院では「全員におすすめです」とは言いません。
ただし、冬や季節の変わり目に風邪をひくたびに咳が長引く、
COPDや喘息が悪化する、肺炎で入院したことがある、
酸素が下がりやすい。
そのような方には、一度検討する価値があります。
「自分は打った方がいいのだろうか」と迷われる方は、
診察時にお気軽にご相談ください。
ワクチン接種は電話での事前予約制です
RSVワクチンは常に十分な在庫があるとは限りません。
接種をご希望の場合は、
ネット予約ではなく、必ず事前にお電話でご予約・お問い合わせください。
当院に定期通院中の方は、
いつもの診察時に「RSVワクチンについて聞きたい」と
医師またはスタッフへお声がけいただいても構いません。
当院電話番号:092-821-0053
よくある質問
Q.RSウイルスは子どもの病気ではないのですか?
子どもで有名な感染症ですが、大人にも感染します。
健康な成人では風邪症状で済むことが多い一方、
高齢者やCOPD・喘息・心疾患などがある方では、
肺炎や呼吸器疾患の悪化につながることがあります。
Q.大人でもRSウイルスの検査はできますか?
検査自体はありますが、
成人では一般外来で保険診療として使いにくい場面があります。
また、大人ではウイルス量が少なく、
実際には感染していても検査キットで陰性と出ることがあります。
当院では、成人のRSウイルス検査は通常行っていません。
呼吸状態や持病の悪化を総合的に見て、必要な治療につなげます。
ただし、肺炎などで入院が必要な場合には、
入院先の医療機関で原因検索としてRSウイルス検査を行うことがあります。
Q.RSVワクチンは保険で接種できますか?
成人向けRSVワクチンは、現時点では任意接種であり、
当院では自費接種です。
費用がかかるため、
年齢や基礎疾患、肺炎や増悪のリスクを踏まえて個別に検討します。
自治体によっては今後助成制度が始まる可能性もあるため、
最新情報は自治体の広報などもご確認ください。
Q.COPDがある場合は接種した方がいいですか?
COPDでは、ウイルス感染をきっかけに増悪を起こすことがあります。
特に60歳以上、増悪を繰り返す方、肺炎歴がある方、
在宅酸素療法(HOT)を行っている方では、
RSVワクチンを検討する価値があります。
Q.喘息でも接種した方がいいですか?
喘息でも、風邪をきっかけに咳や喘鳴が悪化しやすい方では、
検討対象になります。
特に、風邪のたびに咳が長引く方、
夜間の咳が増える方、発作時の吸入薬を使う回数が増える方では、
診察時にご相談ください。
ただし全員に一律に必要というより、
年齢、重症度、増悪歴、費用負担を踏まえて判断します。
Q.妊婦向けRSVワクチンは接種できますか?
当院では妊婦さんを対象としたRSウイルス母子免疫ワクチンの接種は行っていません。
妊娠中のRSVワクチンについては、
産婦人科、分娩予定施設、妊婦健診を受けている医療機関でご相談ください。
Q.RSVワクチンは毎年接種する必要がありますか?
現在のデータでは、
1回の接種で少なくとも2シーズン、約2年程度は
予防効果が持続することが示されています。
そのため現時点では、
インフルエンザワクチンのように毎年接種するワクチンとは考えられていません。
Q.インフルエンザや肺炎球菌ワクチンと同じ日に接種できますか?
同時接種できる場合があります。
ただし、年齢、体調、ワクチンの種類、副反応の出方を見分けたいかどうかによって、
同じ日に接種するか、日を分けるかを相談します。
参考資料
-
厚生労働省:RSウイルスワクチン
:妊婦向けRSウイルスワクチン、定期接種、接種対象などに関する情報 -
日本感染症学会・日本呼吸器学会・日本ワクチン学会:成人のRSウイルスワクチンに関する見解
:成人RSV感染症の重症化リスク、任意接種対象、ワクチンの考え方 -
GSK:RSウイルスワクチン「アレックスビー筋注用」の接種対象者拡大
:60歳以上に加え、重症化リスクのある成人への対象拡大に関する情報 -
ファイザー:プレスリリース
:アブリスボ筋注用を含むワクチン関連の国内承認情報
RSV VACCINATION
RSウイルス感染症が心配な方へ
COPD、喘息、間質性肺炎、在宅酸素療法中の方では、
RSウイルス感染症が呼吸器疾患の悪化につながることがあります。
RSVワクチンは自費接種であり、全員に必要なワクチンではありません。
年齢、基礎疾患、増悪歴、費用負担を踏まえて、必要性を個別に考えます。
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