非結核性抗酸菌症(肺NTM症)は、結核菌とは異なる抗酸菌が肺に感染して起こる慢性の呼吸器疾患です。 近年、健康診断や胸部CT検査をきっかけに指摘される方が増えています。
当院では、胸部CT検査や気管支鏡検査は行っていないため、非結核性抗酸菌症が疑われる場合には、 近隣の呼吸器専門病院へ紹介し、精密検査と診断を依頼しています。 一方で、診断後の慢性期フォローについては、専門病院と連携しながら対応できる場合があります。
非結核性抗酸菌症とは
非結核性抗酸菌症とは、結核菌やらい菌以外の抗酸菌によって起こる感染症です。 肺に病変をつくるものを、肺非結核性抗酸菌症、または肺NTM症と呼びます。
原因菌としては、Mycobacterium avium、Mycobacterium intracellulare などを含む MAC菌が多く、肺MAC症と呼ばれることもあります。 そのほか、M. kansasii、M. abscessus など、複数の菌種があります。
結核と名前が似ていますが、結核とは異なり、通常は人から人へうつる病気ではありません。 多くは水まわり、土壌、ほこりなど環境中にいる菌を吸い込むことで感染すると考えられています。
このような方はご相談ください
- 健康診断の胸部X線で異常を指摘された
- 胸部CTで「非結核性抗酸菌症疑い」「肺MAC症疑い」と言われた
- 咳や痰が長引いている
- 血痰が出たことがある
- 気管支拡張症を指摘されたことがある
- 以前に肺NTM症と診断され、定期的なフォロー先を相談したい
- 専門病院で診断されたが、普段の通院について相談したい
ただし、発熱、強い息切れ、血痰の増悪、体重減少が進む場合などは、 より詳しい検査や入院対応が必要になることがあります。
診断にはCT検査と菌の確認が重要です
非結核性抗酸菌症は、胸部X線だけで確定診断する病気ではありません。 胸部CT、特に高分解能CTで、気管支拡張、粒状影、分枝状陰影、空洞影などを確認し、 さらに喀痰や気管支鏡検体から抗酸菌が培養されることを確認します。
現在の診断基準では、一般に、異なる喀痰検体で2回以上培養陽性となること、 または気管支洗浄液や肺胞洗浄液で培養陽性となることなどが必要です。 これは、非結核性抗酸菌が環境中にも存在し、1回だけ検出された場合には 病気の原因と断定できないことがあるためです。
当院では喀痰検査の採取自体は可能ですが、非結核性抗酸菌症が疑われる場合には、 胸部CT、菌種同定、薬剤感受性、必要時の気管支鏡検査などを含めた総合評価が必要になります。 そのため、疑いがある段階で呼吸器専門病院へ紹介することを基本としています。
治療は必ずしもすぐに始めるとは限りません
非結核性抗酸菌症は、診断されたからといって、すべての方がすぐに抗菌薬治療を始めるわけではありません。 症状の有無、画像所見の進行、菌の種類、空洞病変の有無、喀痰塗抹検査の結果、 年齢、体力、併存疾患、薬の副作用リスクなどを総合的に判断します。
病状が軽く、進行がゆっくりであれば、定期的な画像検査や喀痰検査で経過を見ることもあります。 一方で、空洞病変がある場合、喀痰中の菌量が多い場合、症状や画像所見が進行している場合には、 治療開始が検討されます。
治療は長期にわたることがあります
肺MAC症などでは、複数の抗菌薬を組み合わせた治療が行われます。 代表的には、マクロライド系抗菌薬、エタンブトール、リファンピシンなどを組み合わせます。 病型や重症度によっては、注射薬や吸入薬を含めた治療が検討されることもあります。
治療は長期に及ぶことがあり、視力障害、肝機能障害、消化器症状、薬剤相互作用などにも注意が必要です。 そのため、治療開始や治療薬の調整は、呼吸器専門病院での評価を基本としています。
当院でできること
1. 非結核性抗酸菌症が疑われる方の初期相談
健診異常、長引く咳や痰、過去の画像所見などを確認し、 必要に応じて胸部X線検査や血液検査を行います。 非結核性抗酸菌症が疑われる場合には、CT検査や菌の詳しい検査が可能な病院へ紹介します。
2. 専門病院への紹介
当院では胸部CTや気管支鏡検査を行っていません。 そのため、診断確定や治療方針の決定が必要な場合は、 近隣の呼吸器専門病院へ紹介します。
3. 診断後の慢性期フォロー
専門病院で診断や治療方針が決まった後、状態が安定している方については、 病院と連携しながら、症状の確認、胸部X線、採血、副作用確認などの一部フォローを行える場合があります。 治療内容や病状によっては、引き続き専門病院での管理が必要です。
当院でできないこと・原則として紹介する場合
- 胸部CTによる詳細な画像評価
- 気管支鏡検査による検体採取
- 菌種同定や薬剤感受性を含めた専門的評価
- 重症例、空洞病変を伴う例、急速に悪化する例の治療導入
- 注射薬や吸入アミカシン製剤などを含む専門的治療
これらが必要と考えられる場合には、適切な医療機関へ紹介します。 無理に当院だけで完結させるのではなく、必要な検査と治療につなげることを重視しています。
受診時にお持ちいただきたいもの
- 健康診断の結果
- 胸部X線やCTの結果用紙
- 画像データが入ったCD-R
- 紹介状
- お薬手帳
- 過去の喀痰検査や抗酸菌検査の結果
画像データや過去の検査結果があると、病状の経過や紹介の必要性を判断しやすくなります。
院長より
非結核性抗酸菌症は、診断にも治療にも時間がかかる病気です。 すぐに治療を始めるべき方もいれば、慎重に経過を見る方がよい方もいます。 また、治療薬は長期間に及び、副作用や薬剤相互作用にも注意が必要です。
当院では、呼吸器専門医として、疑われる段階で適切な病院へつなぐこと、 そして診断後の慢性期には専門病院と連携しながら無理のないフォローを行うことを大切にしています。
非結核性抗酸菌症を指摘された方へ
健診やCTで非結核性抗酸菌症を疑われた方、過去に肺MAC症と診断された方は、 検査結果や画像データをご持参のうえご相談ください。
