最初にまとめ

・気管支喘息は、多くはアレルギー反応によって気管など空気の通り道が炎症を起こしてむくみ、狭くなる病気です

・症状はヒューヒュー、ゼーゼーを伴う息苦しさが典型的ですが、咳や痰だけが長く続く場合も少なくありません

・世界的な標準治療は吸入ステロイド薬と気管支拡張薬が主体で、当院でもこれに準じています

・肺機能検査、呼気一酸化窒素濃度測定、血液検査などで診断します。説明を入れると初診では30分以上かかります(最終枠の予約では検査困難です)→当院の予約リンクです

・喫煙はもっての他です。電子タバコを含む喫煙者は、ぜひ禁煙しましょう。ご家族など周囲に喫煙者がいる場合も禁煙させましょう。当院で禁煙外来が可能です。

・風邪をひく、季節の変わり目、ストレスなどで発作が起こりやすく、症状がなくても普段から吸入薬を使用して予防することが大切です

・自分で喘息を疑った時は、きちんと検査、評価して薬の必要性を説明できる医療機関(呼吸器内科)を受診しましょう

・製薬会社の喘息情報リンクもご覧になれば、より理解が深まるでしょう
グラクソ・スミスクライン社作成のサイト
アストラゼネカ社作成のサイト

気管支喘息とは

 当院の患者さんで一番多い病気です。長引く咳、痰、息苦しさ、呼吸の時にヒューヒューゼーゼーといった音が聞こえる症状があります。子供の病気というイメージが強いかもしれませんが、大人発症の成人喘息もあります。妊娠・出産や引っ越し、ペットを飼い始めたなどの要因で発症することもあります。咳だけが症状の咳喘息というものもありますが、基本的には喘息の軽いものと理解できます

 

気管支喘息の症状は

 普段は症状がありませんが、何らかのきっかけ(ストレス、風邪をひいた、時には飲酒)で発作が起こると呼吸時にゼーゼーヒューヒュー(喘鳴)の音がしたり、咳や痰が増えたり、息苦しさを自覚したりします。夜間や早朝に悪化するのも一つの特徴です。横になって眠れないのであれば、入院を検討しても良いレベルとお考え下さい。喘息で亡くなる方は日本で年間2000人弱ですが、当院開院6年でお一人だけですが勝手に治療を辞めた40代の方が亡くなっています

 

気管支喘息の機序(起こり方)

 気管支喘息は主にアレルギーによって起こります。空気の通り道(気道)である気管支で主にアレルギー的な炎症が起こり、気道がむくんで細くなってしまいます。また、分泌物(痰など)が増えます。

 治療しないまま放置すると、炎症が長期間続くことによって、気管支が固く変性してしまって、元に戻らなくなってしまいます。これはリモデリングと呼ばれ、すぐに発作が起こったりする難治性喘息の原因となります。リモデリングを起こさないためにも、症状がなくてもきちんと治療を続けましょう

 

気管支喘息の診断方法

 問診で気管支喘息を疑った場合、肺機能検査(スパイロメトリー)で診断します。気管支を拡げるお薬を吸ってもらった前後で成績を比較して、一定の改善が見られれば気管支喘息と診断します。その他当院では専門的検査の、吐いた息のアレルギー的な気道の炎症程度を調べる呼気一酸化窒素(FeNO)濃度測定検査も行っています。血液検査でアレルギー体質があるかも調べます

 喘息は必ずしもアレルギーだけが原因ではないので、これらの検査で異常がない場合も少なくありません。その場合は、喘息のお薬を始めてもらい、それによって症状が良くなれば喘息と考える場合もあります(診断的治療といいます)

 

気管支喘息の治療薬

 軽症から重症まで全ての喘息で、気道の炎症を抑える吸入ステロイド薬が最も大切なお薬です。基本的には発作がないときも定期的に使用します。ほとんど肺だけに取り込まれるので、全身的な副作用は稀です。日本では1990年代中頃から使用されるようになり、喘息による入院や死亡が劇的に減っています

 もう一つの治療の柱は、長く効く長時間作用型の気管支拡張薬です。細くなった気道を拡げる作用があります。喘息は空気の通り道がむくんで細くなってしまう病気です。ステロイドで炎症を抑え、気道を強引に拡げるのが気管支拡張薬です。ステロイドと気管支拡張薬が一つになった吸入薬(合剤 ごうざい)も良く使われます。発作をすぐに止めたい場合、短時間作用型の気管支拡張薬(メプチンやサルタノール)を使います。注意点ですが、吸入ステロイドを使わずして短時間作用型の気管支拡張薬だけでしのぐのは止めましょう。喘息死の可能性が高まります。もし説明もなしに短時間作用型の気管支拡張薬だけが処方されている場合、まず間違いなく専門外の先生ですので(いわゆる素人処方)、きちんと呼吸器内科を受診することをおすすめ致します。

 これだけでは不十分な場合は、抗コリン薬と呼ばれる気管支拡張薬の吸入、アレルギーの一部を抑えるロイコトリエン拮抗薬やテオフィリン製剤、漢方薬などを追加します。それでも駄目な時は、院内で気管支拡張剤のネブライザー吸入していただいたり、ステロイド薬を飲んでいただいたり、院内で点滴したりします。

 それでも不十分な場合の奥の手です。発作をたびたび起こすような難治性喘息の方には、アレルギーを引き起こす物質(IgE)や好酸球という免疫細胞の働きを抑える注射薬をお勧めすることもあります(抗体製剤といいます)。一般に抗体製剤は高価(3割負担でも月数万の自己負担)ですので、公的補助制度もあります。

  最後に現時点で究極とも言える治療です。気管支平滑筋焼灼術といいます(2015年保険適用)。入院が必要で病院紹介となりますが、簡単に述べると、重症喘息で分厚く(狭く)なった気道の筋肉(平滑筋)に対して65℃で温めることで筋肉を減少させるのが原理です

 

発作時の治療

 発作が起こってしまった時には、短時間作動型の気管支拡張薬(メプチンやサルタノール)を吸入して20分様子を見て下さい。吸入ステロイドと長時間作用型気管支拡張薬の合剤、シムビコート(後発品名ブデホル)も同様の目的で使えます。これで息苦しさが良くならない時はもう一度同じ薬を吸入して、再度20分様子を見て下さい。それでも良くならない時は、早目に医療機関を受診して下さい。夜間休日で当院が開いていない場合は百道浜の急患センターなどが該当します。
 また、ステロイド(プレドニンなど)を飲む様に指導されている場合は、指示に従って開始して下さい

発作がない時の治療

 良くいただく質問で、気管支喘息は治りますかというものがあります。残念ながら例えば高血圧や糖尿病のように、基本的には完全には治らない病気と考えられています。何年も発作が無くて、もう治ったと思われている方も、呼吸機能が徐々に低下していくことがあります。また、風邪をひくなどのきっかけで再発する事があります。吸入ステロイド薬などの喘息の治療は、発作がない時でも続けていく事が大切です

 生活習慣で大事なことです。風邪をひかないよう、疲れ、ストレスを避ける。喫煙はもっての他。飲酒で誘発される場合もあり得ます。ダニ、ホコリなどを減らすためにお掃除はまめにしましょう。インフルエンザの予防接種も大事です。毎年必ず接種することをおすすめします。タバコは、喘息発作を引き起こしやすくするだけでなく、COPD(慢性閉塞性肺疾患)という病気も引き起こします。COPDはタバコによって肺が壊れていく病気で、壊れた肺は二度と元に戻りません。進行すると在宅酸素療法が必要になります。新型コロナウイルスにかかった場合の悪化する可能性も非喫煙者と比較してぐっと上がります。タバコは、電子タバコを含めて必ず止めましょう。

 

妊娠したときにはどうする?

 基本的に、吸入薬は妊娠時にも殆ど悪影響を与えません。むしろ発作で苦しい時、おなかの赤ちゃんの酸素不足が心配です。これが、流産・胎児の奇形に最も影響することがわかっています。妊娠したとわかったときも、吸入ステロイド薬をやめないで下さい。当院でしっかり管理可能です。

 

スポーツはできる?

 例えばフィギュアスケートの羽生結弦選手、スピードスケートの清水宏保選手、競泳の萩原智子選手は気管支喘息であることを公表されています。すなわちこのレベルのアスリートの運動強度でも、しっかり治療していけば問題ない病気になっています。健康な人と同じようにスポーツもできることがほとんどです。しっかり治療していきましょう。